Thursday, April 7, 2011

3.11 から一ヶ月: 海外に住むあなたへ (by Kaori M.)


311日からそろそろ1ヶ月がたとうとしています。

私は現在アメリカ在住で、日本に住んでいたときには心理職についていました。高齢者専門病院で患者さん、および家族のカウンセリングを3年、その後は高次脳機能障害の臨床研究に6年携わり、現在は神経科学研究の技術者として8年程働いております。こんな経歴の私が「心のケア」について皆様に向けて書くのはふさわしくないのは承知しておりますが、自分の経験もふまえ、また、このブログの主に説得されたので、少し長くなりますが、書かせていただきます。

被災された方々、家族や親しい方を震災で失った方、未だ連絡が取れないで心配している方々へのケアについては専門家の方がいろいろと書いてくれています。リンク先を一番最後に乗せてありますので、どうぞそちらをご覧下さい。

ここであえて書きたいことは、心のケアは、被災者の方だけではなく、被災してないからこそ生まれてくる罪悪感にも必要だということです。たとえ被災地に全く知り合いがいない人、遠く離れた海外に住んでいる人でも必要になることがあります。これは、そういう、被災地から遠く離れた人々に読んで欲しいのです。

今回の震災は、海外にいても streamNHK などで日本のニュースを逐一、そしてリアルタイムで見ることができました。遠くに住む我々にはありがたかったことではありますが、また逆に、次々と入ってくるあまりの衝撃的な映像、内容に、ニュースから離れられず、眠れなかったり、すぐに涙がでてきたり、何もできない自分の無力さにただ呆然としている方々も多かったことと思います。このような視覚的情報は心の均衡を壊すのに十分すぎるものでした。未曾有の震災がもたらした被害は、被災地にいない多くの人々にも今まで経験したことのないショックを与えたはずです。

被災地から遠く離れ、安全で、停電もなく、食べ物も水も豊富にある生活をしている私たちは、被災地のために何かしなくては、という思いが特に強くあるのではないでしょうか。

「自分だけ」が何不自由なく生活していることに罪悪感を覚えることもあります。あなたは全く悪くないのに。

「被災地の方は不便な生活をしているのだから。
他人を思いやる心は素晴らしいと思います。でも、極端な話、私がここアメリカで節電をしても、日本の被災地への電力供給の足しにはなりません(電気料金が少し減ってその分を募金に回せるかもしれませんし、節電は良いことですが)。

「お花見をして楽しい気分になるのも何だか申し訳ない、映画を見に行く元気なんてないし、日本でも楽しいイベントを自粛しているのだから、私も自粛しないと。
楽しいことを自粛することが被災地のためになるのでしょうか?自分の「罪悪感」や「申し訳なく思う気持ち」をどうしようもないから、楽しいことを自粛することで何とか心のバランスを取っているのではないですか?

先日のニュースで花見を自粛しないで欲しい、という岩手のお酒「南部美人」の蔵元からの訴えを見ました。お酒が消費されないからです。過度の自粛はかえって経済を圧迫し、被災地やその近郊で生活をしている方々へ迷惑になることもあるという一例ではないでしょうか。

被災地の人々のために何かしたいという気持ちを誰もが持っています。何となく誰かに悪い気がする「罪悪感」を持つことはないのです。私たちは遠くにいるからこそ、今を普通に、元気に過ごすことで、これからも被災地への支援を長く続けて行けるのだと思います。

もう1つ。
子供たち、家族のことを放っていないでしょうか。遠くの被災者、被災地に思いを馳せすぎて、身近な人たちを、自分の普段の生活を犠牲にしていないでしょうか。

どうか、少しの間だけ、ネットやニュースから離れてみてください。お友達が近くにいる方はお友達とおしゃべりしてください。仕事をしている方は、職場で話してみてください。 家族のいる人は家族と向き合って話してみてください。お子さんのいる方は、お子さんと遊んでください。

ネットやテレビで情報収集するだけじゃなく、生身の人間と交流をもつことで、気分が少し上向きになるはずです。自分の感情を誰かに話すことは、自分が本当はどう感じているのか、客観的にみる助けになります。

お友達がまだいない場合でも、とにかく外へ出てみてください。春です。生命の息吹を感じられる良い季節です。「こんな時だから」と自分を追いつめず、普通に生活を送ることは、けして悪いことではないのです。笑ったり、楽しんだりしていいのです。

もちろん、自分に何ができるだろうか、と考え、すでに行動している方も大勢いることでしょう。それはもちろん素晴らしいことだと思います。でも、がんばりすぎてはいませんか?日本のため、被災地のため、と一生懸命にがんばっている姿は、お子さんの目に誇らしくうつっているかもしれません。ですが、いつもよりもお子さんにかける時間が少なくなっていませんか?

繰り返しになりますが、自分の普段の生活を犠牲にしないでください。これくらい、被災地の方に比べたら、とがんばりすぎないでください。行動にうつしている時点で、あなたは十分がんばっています。もっともっとできるのじゃないか、と思っているかもしれません。それはその通りで、一生懸命がんばれば何だってできるでしょう。でも、私たちは短距離走の選手ではなくてマラソン選手にならないといけないのではないでしょうか。被災地への、そして日本への支援を長く続けていくために。

偉そうなことを言っているかもしれません。でもこれは、私自身への戒めのメッセージでもあります。私も、地震のことを聞いたあとは、3日程は何も手につかずただただニュースに釘付けでした(仕事中も見てました、すみません)。目が離せず、常にそのことばかり考え、夜眠れず、職場で誰かに「あなたの家族は大丈夫だった?」と聞かれるたびに涙がこぼれ落ちそうになりました。家族は無事だったのに。こんな状態はおかしいのです。ちょうど9.11の後と同じだったので、これではいけない、と気づいたのです。自分の経験についてはまたそのうち書きます。

長くなりました。

Photo by Kanji Takeno



 リンクをいくつか載せておきます。検索すればもっとたくさん出てきます。

災害後の心のケアについて、私がここで言いたかったことと同じことが書かれています。

子供に震災の映像を見せないでください、ということが書かれています。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/blog/yoshida/201103/518899.html

日本心理臨床学会から子供の心のケアについて、災害後、どのくらいたったらどういうことをしたらよいかについて。よくまとまっています。

アメリカ国内でまとめられたものです。英語だけでなく、日本語のリンク先(Resources in Japanese, Helpful links in Japanese)もあります。

被災者向けのストレスマネージメントについて。ストレスに自分でどうやって対処していくか、について被災者向けに書いてあります。


日本トラウマティイク・ストレス学会の大震災支援情報サイトです。

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